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子育てで得た力をデジタル広告のキャリアに生かして活躍中:The Trade Desk 井川麻里子さんに聞く【後編】

変化が激しいデジタル広告業界で育児をしながらキャリアを積むのに必要なものとは何か。

今、女性が子どもを持ちながら産休・育休をとってキャリアを積むことが当たり前になり、男性の育児休業取得推進の動きもあり、男女関わらず育児をしながら働くことが求められています。ただ、めまぐるしく変化するこの業界で、一時的なブランク、時間的な制約が発生することは、いつの時代でも働き方に大きな影響をもたらします。

前編では、現在まさに子育て中であるThe Trade Deskの井川麻里子さんに、時間的な制約を乗り越え、さらなるステップアップを目指すために実践していることを伺いました。

後編では、働きやすいデジタル広告業界に必要なことは何か、広告運用者は業界においてどういう立ち位置であるべきかなどについて、Index Exchangeの香川晴代さん、アタラCEOの杉原がディスカッションしました。

話し手:
The Trade Desk
アソシエイト ビジネス デベロップメント ディレクター
井川麻里子さん

聞き手:
Index Exchange
日本担当マネージングディレクター
香川晴代さん

アタラ合同会社
CEO
杉原剛


日本での広告運用者はどのような立ち位置であるべきか

杉原:さて、前回に引き続き、この対談ではデジタル広告業界におけるキャリアについて取り上げていますが、Unyoo.jpを読んでいただいている「広告運用者」について考えてみたいと思います。そもそも、日本のデジタル広告業界において広告運用者というのは、どういう立場なんでしょう。井川さんは、どう思いますか。

井川:広告運用者の仕事は、とても多岐にわたるじゃないですか。オペレーショナルな仕事だけではなく、配信設定の仮説づくりもしなければならないし、運用の最適化によるパフォーマンス改善も求められる。PDCAを回しながらデータを見て、時にはイノベーター的に新しいインサイトの発掘や、コンサルティングの要素があり、複雑で重要な仕事だなと感じています。
ただ、その複雑な仕事なのにもかかわらず、その重要性がまだまだ伝わりきっていないように思います。

本来、広告運用者は、マーケターや広告代理店の営業といったフロントの方とパートナーになって、一緒に課題解決していく立場だと思うので、より連携していくことが業界の発展のためにも必要です。The Trade Deskでは、トレーダー(広告運用者)はデータのスペシャリストとしてマーケティングにおいて重要な価値を提供しているという意味を込めて、トレーディングスペシャリストと呼んでいます。

香川:井川さんが広告運用者の重要性が伝わっていないと感じられている理由は何でしょう。

井川:やはり広告運用者の重要性は業界全体でもっと広く認められるべきだと思います。The Trade Deskにおいては職種間の上下は一切なく、むしろ並列で、営業とアカウントマネージャーとトレーダーが三位一体でお客さまをサポートすることがベースになっています。

杉原:The Trade Deskさんの中では、アカウントマネージャーもトレーダーも、長期間その職種を専門にキャリアを築いて、エキスパートになっていく傾向が強いのかなと思います。海外のカンファレンスに行くと、欧米では、やはり極めている方がとてもたくさんいる印象です。よい悪いは別にして、日本の広告代理店では新入社員はまず運用をやってみなさい、というのが多いですよね。基本だから、そのやり方はよく分かりますが、運用で実力をつけた人が、人手不足もあって、すぐにマネージャーにアサインされ、現場力をなくしていくというサイクルがあります。この20年間、このサイクルは変わっていない。
もちろん、運用を極める人もゼロではありませんが、広告代理店に限らず業界としても、もう少し組織体制やキャリアパスがいろいろあってもよいんじゃないかな、とは思うんですよね。

香川:確かに、この問題は、日本のプログラマティック業界の課題と密接に関わっていると思っています。トレーディング(広告運用)の仕事をする人は、プロダクトに一番精通してる職種じゃないですか。アカウントマネージャーと協力しながら、クライアントに対して専門知識をもって運用方法や方向制を決めていく。クライアントにとっては、いろいろな可能性を広げてくれる人だと思うのですが、広告代理店がその能力を生かし切れていないのではないかと思うことがあります。

特に、検索連動型広告の場合、長年「運用のプロに任せておけば結果は出る」という認識になっていますよね。

杉原:そうですね。運用のプロフェッショナルという存在が大切ですし、その重要性は、この20年あまり変わっていません。運用型広告の基本となるのが運用の部分であり、運用をやっていれば、いろいろなことができるようになります。運用からアカウントマネージャー、そして他へというキャリアパスもよいですが、もっと運用を極める人たちが増えないと、毎年、毎年トレーニングして早いうちに卒業して、またトレーニングして卒業して…というのは、業界としてしんどいと思います。業界の慢性的な人手不足もあって難しいとは思いますが。

香川:教えたと思ったら異動して、というサイクルですよね。

困ったときに実際に課題解決してくれるのは広告運用者

香川:私は今、サプライ側の仕事に携わっているので、The Trade DeskのようなDSPのパートナーの事業者と働く中で、トレーダーの人たちと密に働けることって重要だと感じるんですよね。広告代理店なり広告主が、ここの在庫を改善してより効果を上げていきましょうとなっても、トレーダーの人たちと一緒にやらなければ、それが採用されて効果を出していくこともできないので、すごくその重要さを実感する立ち位置にいますね。

井川:困ってるときに課題解決してくれるのがトレーダーだということは、本当にありますよね。思うようにマーケティングの成果が上がってないときの次の一手とか、テクノロジーのトラブルが起きた際に、実は活躍するのがトレーダーだったりします。

杉原:一方でアカウントマネージャーも、またいろんな素養が必要だと思っています。プロダクトのことも、もちろん分かってないといけませんが、お客さまのゴールも、テックも、AIも、クリエイティブも、いろいろ考えなければいけない立場なので、本当にいろんな素養を持ち合わせていないとなかなかできない。ですが、自ら鍛えていくことで本当なんでもできるようになるのがアカウントマネージャーであり、とてもよい仕事じゃないかなと思っています。

井川:本当にそうですね。私もアカウントマネージャーを6年やって、今はセールス職2年目ですが、アカウントマネージャーだったからこそ語れることが多いです。もちろん、アカウントマネージャーを極めていくこともできますし、キャリアの幅を広げることもできる仕事です。デジタルやマーケティングの業界に入りたいと思ったときに、アドテク企業のアカウントマネージャー職から入るのはキャリアを広げていく意味でもよい入りになると思いました。

杉原:キャリアの幅が広がりますよね、面白いところですよね。

香川:確かにそうですね。

左から香川さん、杉原、井川さん

広告運用は子育て中の人に合っている仕事

杉原:子育て中の人という観点でいうと広告運用者は、どういう仕事だと考えていますか。

井川:子どもを育てながらという観点でいうと、広告運用の仕事は合っていると思います。マルチタスクをこなせるところや、時間的な制限の中でクイックに動くことなど、子育てと仕事に両方必要な能力かなと。あと、広告運用者にはコミュニケーション能力も必要です。さまざまなステークホルダーとコミュニケーションをとりながら運用していく、形にしていくという、とても難易度の高い仕事ですが、そういったコミュニケーションは、実はワーキングマザーが得意な要素が含まれているかなと感じます。

香川:全く同意見ですね。先ほど出た忍耐力や、マルチタスク、いかにタイムマネジメントしていくかというのは、男女にかかわらず、育児経験で磨かれるスキルの代表だと思っていて。

井川:さらに女性という観点でいうと、私の中ではデジタル広告業界はまだ比較的新しい業界だと思っているのですが、男女の機会均等というところからスタートできているのではないかと。デジタル広告業界のよいところは、ある程度そこのベースはできている中で、男女関係なく自分の頑張り次第でチャレンジがしやすいところかなと思っています。

香川:機会均等であることを身をもって感じているんですね。

杉原:デジタル広告業界でも、男性が育休というのは、よく聞くようになりましたね。育休の“とりやすさ”があるかどうかは分かりませんが。業界として、働きやすさは前進しているのではないでしょうか。アタラも男性育休をとるメンバーがいますが、経営側からすると、働きやすさをつくることは必須だと思います。採用ができない上に、離職してしまうので。

働きやすい業界に必要なのは業界横断で学べる環境とフラットな関係性

杉原:「働きやすさ」というお話が出たところで、デジタル広告業界をどんなライフステージでも働きやすい業界にしていくためには、何が必要だと思いますか。

香川:外から見ると、デジタル広告業界の人たちは、専門用語を使って日々革新的なテクノロジーを使いこなしながら働いている専門性の高い人たちだと映っているかもしれません。そういう意味では、人手不足を解消して、働きやすい状況にするためには、各企業でだけではなく、業界を横断して、みんながもっと簡単に学べる仕組みがあるといいなと思いますね。

杉原:それはすごく思いますね。

香川:「もっとDSPを使ったほうがいいですよ」というアドバイスがあっても「いや、Googleが勝手にやってくれるネットワークでいいから」と返ってくるような、知識不足がもとで選択肢を狭めてしまうのは、もったいないですよね。ここの業界に入ってきたいと思う、学ぶ意欲がある人、チャレンジしたい意欲ある人を、いかに業界として取り込んでいくかという観点でも、学べる仕組みが大切だと思っています。

杉原:学びの環境があって、どんどんステップアップできるという夢が持てないと、なかなか人って、入ってこないですよね。

香川:すごく変化の激しい面白い業界なだけに、学ぶ意欲のある人はどんどん学んでいると思いますが、個人差が大きい。個人のモチベーションもそうだし、情報をとって昇華していくことを得意としてるか、そうじゃないかで、大きな差が出てきますね。だから、平等な学びの機会があるといいなと。

井川:私は「働きやすいと感じる=働きがいがある」なのかなと考えています。働きがいがあると感じる仕事は、クライアント様をはじめとする関係者の皆さんと一緒に面白い仕事、いい仕事をしたときです。それを実現するためには、みんなが本当の意味でのパートナーにならなければならない。もちろん商流があり、意思決定フローはありますが、パートナーとして、オープンディスカッションをして、透明性を持って新しいテクノロジーや事例といった情報共有を行い、何がベストかを話し合える業界にしていきたいです。言われたことだけやるのではなく考える力も付きますし、やりがいも働きがいもありますよね。

杉原:そういうフラットなやり方だと、変なコミュニケーション上のストレスも少ないでしょうしね。

井川さん

デジタル広告のやりがい、面白さを伝え、業界を盛り上げたい

杉原:最後に、井川さんが次にやってみたいこと、近未来のゴールを伺いたいです。

井川:私はキャリアを考えるときに、自分に足りないパーツを埋めていきたい、という気持ちが強くあります。こういうところを成長させたいから、こういう仕事をやろうとか、この職種に変えようとか。今は広告主と直接話して、マーケティングをどうデジタルで変えていけるか、というようなコンサルティングができるよう、もう少し時間をかけて足りてないパーツを埋めながら成長したいです。

長期的には、この業界の、この仕事のやりがい、面白さを自分の仲間たちにも伝えていって、みんなで業界を盛り上げることをやっていきたいので、チームビルティングのような仕事にもチャレンジしてみたいです。さらには、携わる人を増やしていけたらいいなと思いますので、啓発活動のようなこともしていきたいですね。

杉原:すばらしい。業界としても、ぜひお願いしたいところです。

香川:The Trade Deskの会社としての柔軟性について井川さんがお話ししてくれましたが、前回、剛が話してくれたように、アタラでも柔軟性の高い働き方を実現している。そして、Index Exchangeも、The Trade Deskと非常に近いサポートや環境が整っています。現在、東京オフィスは半数以上が女性で、育児中の人もいて、APACには女性のリーダーも多くいます。こういう働きやすい環境が業界として、もっと広がっていってほしいと思っています。

さらに、デジタル広告は面白く、魅力的な、やりがいを感じられる仕事だと思いますし、運用者の地位もクライアントとのパートナーシップも、もっと改善していってほしい。その中で、井川さんのように、ご自身の考えを発言してくださることは、いろんな人の刺激になるでしょうし、とても嬉しく思っています。発信することによって、悩んでる人が気付きや助けをもらえたり、興味を持ってもらえることにつながったりすると思うので。

杉原:本当にそうですね。前回に続き、子育てをしながらのキャリア、さらには広告運用者の地位についてまで、広くディスカッションでき、とても有意義な時間でした。どうもありがとうございました。

※当記事の内容、所属、肩書きなどは記事公開時点のものです。
※本記事は、広告運用とマーケティングの情報サイト「Unyoo.jp」掲載記事(2024年2月28日公開)の転載です。


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