見出し画像

「日本の平均年収」をBIツールで可視化してみた

こんにちは。アタラ合同会社コンサルタントの伊藤梓です。

世の中にはいろいろな統計情報がありますが、数字の羅列を見るだけでは、深く理解することは難しいです。そこで、それらの統計情報を理解できるように、BIツールを使って可視化してみます。

前回は日本の広告費を可視化してみました。

今回、可視化するのは日本の平均年収です。

日本の企業は年功序列が多いので、年齢とともに収入も上がっている人が多いかもしれません。しかし日本全体でみたときに、平均年収は上がっているのでしょうか?
また、他国と比べて日本の年収は高いのか、低いのか?
それらの疑問を、データを可視化することで明らかにしていきます。

1.準備

可視化に使用するデータはOECD(経済協力開発機構)から取得しました。OECDは、欧米やアジアの先進国38ヶ国が加盟する国際機構であり、各国の経済に関わる統計情報を公開しています。

データを可視化するためにBIツールを活用します。BIツールとは、データを分かりやすく可視化して意思決定を助けるツールです。今回はDomoというBIツールを使います。

ほとんどのBIツールは使いこなすために習熟が必要ですが、Domoはグラフのテンプレートが豊富にあり比較的容易に使うことができます。主要なBIツールを比較した記事もありますので、興味のある方は是非一読ください。

本記事内ではDomoで可視化したグラフをいくつか載せています。グラフの画像をクリックすると、グラフ専用ページが開きます。グラフ専用ページでは、カーソルを合わせたり、タップすると一部のグラフが強調されたり、数値が表示されます。ぜひ触ってみてください。

2.日本の平均年収と労働時間の推移

まずは、日本の平均年収と年間労働時間の推移を見てみましょう。平均年収は米ドル単位、2016年の為替で計算されています。

平均年収の推移(青い折れ線グラフ)を見ると、若干ではありますが上昇していますね。完全な横ばいではなくて少し安心しました。

労働時間の推移(緑の折れ線グラフ)も見てみましょう。こちらは、働き方改革の甲斐あってか、減少傾向にあるようですね。ただ、時短勤務も含まれているので全体として働き方改革が進んでいるか断言はできません。もちろん統計にはサービス残業は含まれていませんが、全体として減少しているようです。

労働時間が減って、平均年収が少しでも増えているのであれば万々歳では?と思います。

<グラフ化Tips>
ある指標の時系列での推移を把握したい場合は、折れ線グラフがおすすめです。人間の目と脳は、折れ線のそれぞれの角度から増減を自然と読み取るようにできているそうです。
また、比較したい指標を違う色の折れ線グラフで表現すると、それぞれの増減具合とともに、長期的な変化の相関(2つの指標の関係性)を把握することができます。

3.世界の平均年収

少し視野を広げて世界の平均年収をみてみましょう。

こちらは昨年の国別の平均年収を多い順に並べたものです。

日本の平均年収(オレンジの棒グラフ)は、他の先進国と比較すると決して高い方ではないようですね。1位の米国と比較すると倍近くの差があります。これには驚きを隠せませんでした。

<グラフ化Tips>
ランキングは横棒グラフがおすすめです。縦方向でランキングを表現することができます。逆に時系列は横方向で示した方が理解されやすいので、縦棒グラフや折れ線グラフがおすすめです。
また、注目してほしい点だけ色を変えると、目につきやすいのでおすすめです。

4.他国と日本の平均年収の成長

次は平均年収の推移をみてみましょう。

全部の国を並べるとグラフが見づらくなるため、OECD加盟国の全体のグラフと日本のグラフを並べてみます。

日本の平均年収の推移(オレンジの折れ線グラフ)は、先ほど見た通り、多少の上下があるものの若干の上昇傾向にあります。しかし、OECD加盟国全体の平均年収の推移(水色の折れ線グラフ)と比較してみると、成長率にかなり乖離があるのが分かります。

さらに、1990年~2021年の平均年収ランキングの推移もみてみましょう。

ランキングに関しても、日本は他国に水をあけられています。OECDの加盟国が増えたことにより押し下げられているようにも見えますが、決して成長率が高いわけではないということが分かります。

少しでも年収上がってて安心……なんて思っていましたが、日本は他の先進国と比べて平均年収も成長率も低い、という悲しい事実を目の当たりにしてしまいました。

<グラフ化Tips>
ランキングの時系列変化を把握したい場合は、平均年収のランキングの推移で使った「バンプチャート」がおすすめです。バンプチャートはランキングだけを表現する折れ線グラフで、ランキングの元となる指標(ここでは平均年収の金額)は表現しません。このように見せたいものを限定してグラフ化することで、伝えたい情報を明確化します。今回の例のようにランキングが多い(国名が多い)場合は、注目してほしい点のみ色をつけることができます。そうすることで、色をつけた項目のランキングが時間とともに上がったか下がったか分かりやすくなります。

5.世界の平均年収と労働時間

次に、世界の平均年収と労働時間をみてみましょう。今回は単一のグラフではなくダッシュボードで表示してみました。グラフにカーソルを合わせると、全てのグラフの同じ国名のプロットが強調されるので試してみてください。また、年のフィルターを変更することで、2021年以外の結果もみることができます。

まず、ダッシュボードの上半分にある平均年収と労働時間のランキングを見てみましょう。労働時間ランキングは平均年収と比較して変化が緩やかになっていますね。1位のメキシコのみ2位との差が大きいですが、その他の国は差が少ないようです。

日本(オレンジの棒グラフ)に着目してみましょう。残念ながら、日本の労働時間のランキングは、平均年収のランキングより少し上がっています。

他にも気になる国があれば、その国にカーソルを合わせてみて下さい。カーソルを合わせた国のグラフがハイライトされます。年収の多い国は労働時間はどうなっているか、労働時間の多い国は年収は多いのか、などを確認できます。

次に、ダッシュボードの下半分をみてみましょう。国別の平均年収と労働時間の関係性をしめす散布図です。日本(オレンジのプロット)はだいたい真ん中あたりにいるようですが、全体をみると右肩下がりの傾向があるようです。つまり、平均年収の多い国は労働時間が短く、平均年収の少ない国は労働時間が長いということです。米国のように年収も高く労働時間も長い国もあるので、一概には言えませんが、驚きの事実です。労働時間あたりの年収、つまり生産性は、年収よりも格差が大きいということですね。

<グラフTips>
2つの指標の関係性を把握したい場合は「散布図」がおすすめです。一方の指標が大きくなると、片方の指標は大きくなるか小さくなるかを確認することができます。この傾向を「相関関係」といいます。

注意しなくてはいけないのは、相関関係があっても因果関係があるかはわからない点です。今回のグラフの場合は横軸に労働時間、縦軸に平均年収を取り、右肩下がりの相関関係が見えました。しかし、「労働時間を長くすると平均年収が低くなる」という因果関係を決定づけてよいわけではありません。この話だけで一つ記事が書けそうなので、今回は注意を述べるだけに留めておきます。

さいごに

いかがでしたか?

本記事では日本と世界の年収をBIツールを使って可視化してみました。「日本の年収」だけを見ても分かることは少ないですが、労働時間のような関係する指標や時系列変化・他国の年収など、他の指標と一緒に可視化することで、考察が可能になったと思います。

肝心の考察ですが、

  • 日本は労働時間は減少傾向にあり、平均年収は若干の増加傾向にある(嬉しい!)

  • 他の先進国に比べると日本の平均年収レベルは低く、成長率も低い(悲しい…)

  • 労働時間が短い国は年収が高い傾向にある(羨ましい)

以上のことがわかりました。

日本の平均年収は先進国の中でも低いという事実はとても悲しいことです……が、自分だけでも収入レベルをアップしたいと思っているそこのアナタ! 次回は「職種別の平均年収を可視化してみた」をお届けします。スキルアップの参考にしてみてください。お楽しみに!

BIツールの活用やデータ活用を推進しよう

  • BIツールを導入したものの、うまく活用できていない

  • データ活用を組織に定着させるためのノウハウがない

  • 見るべき指標が複雑・多様化していて、どれを見ればよいのかわからない

  • ダッシュボード化の際、どのようなデータを取得すればいいかわからない

  • データがなかなか集められない

  • ビジネス課題解決のための指標を可視化し、すぐに判断したい

  • どのBIツールを選べばいいかわからない、選べない

という方は、まずはライトな相談から。支援内容とお問い合わせはこちらをクリック



アタラでは一緒に働くメンバーを募集しています