マーケター自身のマーケティングを考える:ナレッジハイライト2021年4月号
アタラでは、毎週「アタラ道場」という勉強会を開催しています。この勉強会は、媒体のアップデートについての共有や、昨今のマーケティングトレンドに留まらず、各コンサルタントの強みを生かしたナレッジの共有を「師範」として持ち回りで行います。
5回目となるこの道場レポートでは4月に行われた道場の内容を紹介します。
◇マーケター自身のマーケティングを考える
この回は小出師範による「マーケター自身のマーケティングを考える」会でした。小出師範は新卒でYahoo!JAPANのアカウントマネージャーに従事し、現在はアタラでコンサルタントとしてクライアントの事業の成長をサポートする傍ら、ご自身で会社を経営されるなど、活躍の幅を広げています。
そんな独特のキャリアをお持ちの小出師範の話す、「マーケターとしての自身のマーケティング」をしていくことや、「自分自身のキャリアを作っていくこと」についてのご自身の考えや想いを知り、参加者一同内容とその切り口に興味津々でした。
『マーケティングの仕事と年収のリアル』を参考書籍として紹介しつつ、アタラとして身近なロールモデルと自分の経歴を比べてみて、「これから自分の経歴にどんな文字を並べていきたいか想像してみる」というセッションからスタートし、特に興味深かったのが年収1000万円を超える人と超えない人の差のお話でした。
マーケティング業界において年収1000万円水準を達成するのは、ほんのひと握りの会社の社員にならなければ難しいことです。単純な能力だけでは達成し得ない水準であり、このnoteをご覧の方の身の回りにも、勤勉で優秀な方が年収500万円~600万円で頭打ちになってしまっているという状況に心当たりのある方も多いと思います。
年収はその人の能力だけを反映したものではないのですが、できれば若いうちから能力という視点とは別に、「キャリアの築き方」という視点を持てていれば、年収や状況を変えられるかもしれません。
またこの道場では、マーケターとしての6段階のステージについても紹介し、事業会社と支援会社で働くことで得られるメリットとデメリットにも焦点を当てながら、どうステップアップしていくかについても紹介されました。
1. マーケティング業務の見習い
2.特定業務の担当者(ワーカー)
3. 特定領域の専門家(スペシャリスト)
4. マーケティング施策の統合者(ブランドマネージャー)
5. ブランド・マーケティングの全体の責任者(CMO)
6. マーケティングに強い経営者(CEO)
マーケターには上記の6ステージあり、まずはスペシャリストとしてのキャリアを築くのに最も重要なことは「コモディティ化していない専門性」を得られるように働くということなのだそうです。会社で身につけられる専門性には、市場で高く評価されるものと、高く評価されないコモディティ化した専門性があるため、高く評価される部分を極めていく必要があります。
※コモディティ化とは
市場参入時に高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、どれを選んでも同じという一般的な商品になること。
Webマーケティングの業界で働いていればお気づきの事実かも知れませんが、リサーチ集計や広告出稿の単純なオペレーション等は既にコモディティ化が進んでいる分野です。そして、いまはコモディティ化していなくても、すぐに市場価値が下がっていく専門性もあるでしょう。小出師範は、そんなコモディティ化を察知する方法と、専門性の伸ばし方を紹介していました。
例えば大手広告代理店や事業会社が内製化したり、強化したがっている施策領域のスペシャリストはニーズが高い傾向にあるそうです。私は非常に納得し、この話を聞いてすぐに大手代理店の採用ページや転職サイトの求人情報を見漁りました。
また自身の持つ・または伸ばそうとしている専門性がコモディティ化しているサインとしては「専門領域で特化した会社が「ブランディング」を訴求に持ち出したときが、その領域がコモディティ化した」と見なせるようです。確かにその専門領域としてのニーズが高ければ、他との違いやブランドイメージを持たせることも必要ないので納得できます。
ひとつの専門知識を深堀りするだけの視野狭窄に陥らないように注意し、隣接する専門領域の知識を身につけたり、一つ上のステージの専門知識を学ぶことが大切だとも紹介されていました。
自分で伸ばしたい領域があって頑張っていても、ニーズがなければ年収をあげられるような市場価値を生み出せないので、市場に求められる分野のスキルも伸ばしていきたいものですね…。専門領域だけでも学ぶことは数多くありますが、バランス良く学んでいかなければ!と強く思いました。
また、希望のある情報として「マネジメントスキルは知識やスキルの陳腐化が遅い」ため、マーケティングのマネジメント職はライバルが少ないというお話もありました。とはいえ「マネジメント職は望んでなれるものではない」と、話を聞きながら私が絶望していたところで、小出師範からキャリアを築く具体的なパターンが紹介されました。
支援会社の4つのロールモデル
1. 中小ベンチャー早期抜擢型
ある数十名規模の広告代理店で取締役を担うAさん。新卒入社の際にまだ設立数年の支援会社に就職し、現場の仕事で実績を積み重ね、7年のうちにマネージャー、取締役への出世。その過程では、新しいマーケティング支援ソリューションを立ち上げたり、一方で新規事業を立ち上げたものの撤退したりと成功ばかりではなかった。しかし、創業社長と苦楽を共にし、会社にも愛着をもち、評価も受けて良い報酬を得ている
2. 大手支援会社でじっくり昇進型
準大手広告代理店で取締役を担うBさん。新卒で入社以降、営業畑を長く歩んだ後、経営企画を担い、全社的なデジタルマーケティング強化の旗振り役となっている。会社としてデジタルマーケティングへの取り組みが遅れていることに対して危機感を抱いた際に、営業時代に自ら勉強し提案していたMAを、自社にも導入した。そのため、全社的にデジタルマーケティングを強化する方針となった時に、真っ先にこの方が引き上げられた
3. 真理探究の職人スペシャリスト型
大学院卒後、大手広告代理店の専門子会社でキャリアをスタートさせ、統計分析とモデリングの専門性を高めたCさん。その後、マーケティングITソリューション企業とコンサルティング会社をいくつか渡り歩き、40代からは外資系コンサルティングファームでマーケティングにおけるビッグデータや統計解析のスペシャリストとして良い処遇を得ながら活躍している
4. 事業立ち上げ請負人型
新卒で広告代理店、そこからネットマーケティング会社と戦略コンサルティング会社を経て、大手広告代理店に出戻りしたDさん。マーケティングコンサルティングの子会社を立ち上げた後、データドリブンマーケティング支援会社の社長に転職。広告もネットも、経営戦略も、データドリブンな統計知識にも造詣が深く、立ち上げの実績もあるため、スキルの掛け算で大きな市場価値を獲得した
事業会社のロールモデルもあるのですが、支援会社にいる私にとって、上記のロールモデルは興味深く映りました。自分自身はどのロールモデルに近い経歴になりそうか、または実現できそうかを考えたり、できなさそうだと絶望したり、様々な感情が湧きました。
【しびれたポイント】
1. 独特のキャリアを持つ小出師範だからこその解釈と切り口を交えたキャリア講座だったため、「専門性を高めたい!」というモチベーションを掻き立てられたこと
2. コモディティ化の察知方法の紹介により、スキルを身につける方向性がわかったこと
今回の道場は、自分のキャリアや専門性をどこに置くかを考え直す良い機会でした。常に学び続ける必要がある業界ですが、ニーズがある分野の専門性を高めるためにも、コモディティ化の波を察知しながら学んでいきたいと思います。
◇『世界一楽しい決算書の読み方』から財務諸表の読み方を学ぶ
この回は田畑師範(私)による決算書の読み方に関する道場でした。なぜこのテーマにしたかというと、社会人大学院に通っていた時、決算書を読めることが前提の講義があり、当時困ったことがきっかけでした。
また、クライアントの事業支援をしていく中で、クライアント企業のお金の流れを把握することで全体的な活動状況や注力ポイントを押さえた支援ができると思ったこともあり、学び始めた次第です。そして学んだ内容と、特にわかりやすかった書籍の内容を引用し、釈迦に説法だとは思いつつ、すこしでも役立つ方がいると信じて紹介することにしました。
自分の回の道場なのでレポートしづらいのですが、お話した内容を少しだけ以下にまとめます。
まず決算書とは何かというと、簡単に説明するとその会社と利害関係が少しでも発生する人(ステークホルダー)のために公開されている情報です。決算書の中でも「貸借対照表」、「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」は特に「財務三表」と呼ばれ、それぞれ重要な役割があります。
簡単な概要を記載します。
・貸借対照表(バランスシート)
貸借対照表は企業の財政状況が記されています。その会社がいくら資金を調達し(負債)、何にいくら使用しているのか(資産)を知ることができます。
・損益計算書(P/L)
企業の1年間の活動を通していくら売り上げて、いくら費用がかかり、そしていくら利益を出したのかを記したものです。企業の成績表とも言われています。
・キャッシュフロー計算書
企業の現金や預金がどれくらい増減したのかを計算したものです。黒字であっても現金が足りなくなるだけで企業は倒産してしまうので、企業にいくら現金があり、どのように増減しているのか、ステークホルダーに公開されています。
もちろん、決算書はこんなに簡単な内容を理解しただけでは読むことはできません。決算書が読めるようになりたい方には、『世界一楽しい決算書の読み方』やその他の決算書を学ぶ書籍をぜひ読んでいただきたいです。
◇まとめ
アタラでは学びと実践、そしてその経験のシェアに重きを置いており、道場などの勉強会を通して各コンサルタントは刺激を受け、日々自分を磨く糧としています。
私はアタラに入社して以降、「学んだことは人にシェアしても有用なものか」、「どんな切り口でシェアすれば他のメンバーにとって価値のある情報になるか」という視点で学んだり、情報収集を行うようになりました。これも発表する機会があるからこそ得られたものだと思います。
勉強会の後、知らないことが知れて益々やる気が出ることもあれば、自分の知識の少なさに打ちひしがれるときもあります。しかし1人で全てを知ることはできないからこそ勉強会があります。新たに知ることによってさらに知りたいことが増える環境は、知識欲が旺盛な方には理想的な環境だと思います。もし道場に少しでも興味をもってくださったら、一緒に知見を共有しあいませんか。
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