【Domopalooza Japan 2022レポート】先輩Domoユーザーに聞く!データ活用、DXを推進する上での成功と失敗
SaaS型データ活用プラットフォーム「Domo」を提供する、ドーモ株式会社が主催するカンファレンス「Domopalooza Japan 2022」が、2022年9月7日(日本時間)にオンラインで開催されました。
多種多様な業界のDomoユーザー企業が登壇したセッションでは、データ活用の事例や今後の業界展望等、さまざまな話題が語られました。
その中の一つ、「先輩Domoユーザーに聞く!データ活用、DXを推進する上での成功と失敗」では、Domoのユーザーコミュニティ「Domo Buddies(ドーモ バディーズ)」のコアメンバー4名が登場。Domoにまつわる体験談を語り合うパネルディスカッションが行われました。
Domoの導入前から導入初期、社内のユーザー拡大期まで、あらゆるポイントでのヒントが盛りだくさんのセッションでした。Domoに限らずBIシステムをお使いの方や、BIシステムの導入検討をされている方にぜひ参考にしていただきたく、当日の模様をお伝えします。
「Domo Buddies」とは
2022年3月に発足した、国内Domoユーザー専用のコミュニティです。
ユーザー同士の繋がりができる
知りたいと思う情報が共有される
日々の悩みを相談できる
こうしたコミュニティを目指し、業界も業種も様々なDomoユーザーがメンバーとなり、オンラインでの交流会や勉強会を実施しています。
筆者をはじめ、アタラのコンサルタントもメンバーになっており、月に一度ほどの交流会・勉強会にいつも楽しく参加しています。
コミュニティの会長を務めているのは、弊社データイノベーションコンサルティングチームが支援させていただいている、大和物流株式会社の棚橋 伸治氏です。
本セッションの登壇者
高畑 信吾 氏 エイベックス・デジタル株式会社 ファンマーケティング事業本部 デジタルクリエイティヴグループ ゼネラルプロデューサー
成田 義浩 氏 株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス ダイナミックレールパック本部
棚橋 伸治 氏 大和物流株式会社 企画管理本部 情報システム部 業務支援グループ長
山名 敏雄 氏 日本航空株式会社 広報部Webコミュニケーショングループ長
1.Domoの導入時に困ったこと・工夫したこと
最初のテーマとして取り上げられたのは、Domoの導入を開始した直後にぶつかった壁と、それを乗り越えるために工夫した点についてでした。
Domo化する対象・テーマの設定
高畑氏は、Domoを導入した直後に「既存のExcelレポートと全く同じものをDomoで再現してほしい」というリクエストを受け、非常に苦戦したと語りました。
元データを取り込み、見栄えの良いチャート(Domoでは「カード」と呼びます)の作成まで完了したタイミングで、「見慣れているあの形で欲しいんだよね」という声を受けたと言います。Domo化する対象やテーマを変えるという方法で乗り越えた、とのことで苦労された様子でした。
全く新しいシステムを目にした時に、今まで通りのものが欲しいと使い手側から率直な意見が出ることは、BIに限らずITシステム全般で非常によくあるケースです。
Domoの周辺領域の知識習得
自社の公式SNSのアカウント運用を行っている山名氏は、SNSのデータを連携するためのAPIなど、データ連携に関する知識の面で苦労したと言います。
仕様などが掲載された書籍もまだ少ない領域で、プロジェクトの出だしで壁に当たってしまったとのこと。ドーモ社のサポートを得つつそれらの知識を習得しながら導入を進めた、と語っており、Domoの機能や使い方を知るだけでなく、周辺領域のデータ全般の知識も必要だとわかる例です。
KPIを意識し、見るべきものを決めること
成田氏は、KPI・KGIの概念を意識する文化が社内に根づいていなかったため、「何を見るべきか」「何のために見るのか」がスムーズに定まらなかったという経験を紹介しました。
自社のデータ活用のために何が足りないのかに気づくいい機会になった、と前向きに語られていましたが、予想外のポイントでの停滞で気落ちもあったのではないかと推察します。具体的な作成の作業に入る前に、数値管理の本来の目的に立ち返って考えることがとても重要だと気付かされるエピソードです。
2.活用・浸透のために取り組んだこと
二つ目のテーマは、Domoの活用を社内に浸透させる段階で工夫した点に関してです。Domoの利用を始めてから約1~2年後のタイミングで新たな取り組みを開始した、という声が多く上がりました。
「初めのうちは正直、辛かった…」という、高畑氏からポロっとこぼれた本音から、話題に入りました。
新規のものを優先して作成
1.のテーマでも挙がった通り、既存Excelレポートの再現のリクエストを受けたという高畑氏は、それらの対応を行いつつも、新規のダッシュボード作成を優先して取り組んだと言います。
既存のレポートの再現となると、データ加工の仕組みや表現方法に制限があるため、Domo化したことの効果が見えづらいと考えたためだ、と語りました。
Domoのファンを離さない仕組みづくり
続いて高畑氏は、「Domoが好き!」と言ってくれるユーザーを増やそうと考え、利用できる編集ユーザーアカウントを当初の想定数より多めに確保していた、と語りましたた。「自分も編集してみたい!」と手を挙げたユーザーにはアカウントを素早く割り当て、すぐに試してもらえるようにしていたと言います。
費用の面からユーザーアカウントは数を絞って採用している企業が多い一方で、この取り組みは勇気のいる意思決定であり、なかなか真似できることではありません。
また成田氏によると、アカウントを配布するだけでは利用が広がらないと考え、操作方法だけでなく「何のために使うのか」という基本の考え方も含めた内容の社内研修を行ったとのことです。
ドーモ社主催のイベントへの積極参加
「こんな悩みを抱えているのはうちだけかな…」と思いながら参加したイベントで、同様のポイントに苦戦している他社のDomoユーザーに出会うことができたという高畑氏。「うちではこうしているよ」といったヒントやアドバイスだけでなく、勇気をもらえた、という言葉が印象的でした。
データ活用の目的の明確化
棚橋氏は、まず初めにプロジェクトメンバーを集め、取り組みの目的共有から行ったと言います。
その中で、「ビジネスの改革、新たなビジネス創造」というテーマを決定。プロジェクトの途中でもメンバーでこのテーマに繰り返し立ち戻り、方向性が正しいかをすり合わせをすることができている、と振り返りました。
データを身近に感じてもらうための環境作り
Domoにはガントチャート形式でプロジェクト管理・タスク管理を行う機能があります。活用事例はそれほど多くなく一見マニアックな使い方ですが、こうした機能も棚橋氏は積極的に試し、「こんなこともできるんだ!おもしろい!」という評判を積み重ねていったと言います。
また棚橋氏は、日々の業務で使っているグループウェアのトップページ上にDomoのページを埋め込むこと(詳しくは後述)や、アカウントにプロフィール写真を設定することで親しみやすさを感じてもらえる、という取り組みを紹介しました。
「野菜のパッケージについている生産者の顔のように」という非常にわかりやすい例えを挙げ、他のパネラーからも笑いがこぼれていました。
3.お気に入りのDomoカード、ページの紹介
次に話題になったのは、各メンバーが日々の業務で実際に使っているカードやページ、便利な機能についてです。ここまでのテーマは苦い経験も交えながらの話でしたが、この話題になると各パネラーとも前のめりになり、自慢大会のような雰囲気でぱっと笑顔が増えたのが印象的でした。
Domoの顔となるトップページを”社内ポータル風”に
棚橋氏がまず紹介したのは、会社を象徴するアイキャッチ画像、全社の概況KPI群、テーマごとのリンクが配置された画面です。Domoにログインした際にすべてのユーザーがまず目にするトップページとして、こうした画面を設定しているのだとか。
お気に入りのポイント:
スクロールは使わずに、一画面ですべての情報が目に入ること
フィルターが設定されており、ユーザーごとに自部門の集計データがデフォルト表示されること
テーマごとにリンクが貼られたボタンで関連ページに遷移する仕組みになっていること
他のクラウドサービスやWebサイトへのリンク先も配置されており、社内ポータルサイトのような使い方を実現していること
カスタムチャートで倉庫の在庫回転率が一目でわかるマップを作成
続いて棚橋氏が挙げたのは、倉庫を上から見た図面上に棚の配置が表現された、物流企業ならではのマップのカードです。カスタムチャートという機能を使い、倉庫図面の画像上に実績データをプロットしています。
緑の色が濃い棚ほど商品が頻繁に出入りする(つまり、在庫回転率が高い)箇所を示しているとのこと。在庫回転率が高い商品を倉庫の出入り口付近に配置するという、生産性向上のためのアクションをスムーズに行うことができるようになったと、その効果も語りました。
お気に入りのポイント:
在庫管理システムと自動連携しパッケージ化することで、あらゆるレイアウトの倉庫に対応できるよう標準化していること
勘と経験に頼ることなく、誰が見ても状況判断できるようなデザインであること
図面上の棚のマス目をクリックすると、その棚の段ごとの実績が表示され、段数の入れ替えも検討できる仕組みになっていること(この点はぜひ上記デモでお試しください)
SNS運用の効果を媒体別×施策別の棒グラフ1つで可視化
「SNS運用による効果の可視化が、Domoで最も実現したいことだった」と語る山名氏は、媒体別×施策別に反応の量を示した棒グラフを紹介しました。
TwitterやFacebookなどでは、媒体個別には実績を確認できる仕組みはあるものの、「ツールが別々になっていて個々に確認しなければならず、しかも指標が揃っていない」というマーケティング施策管理者によくある課題を乗り越えた例です。
見た目は非常にシンプルですが、媒体ごとに異なる指標の整理など、データの事前準備の工程にも丁寧な工夫がなされていることが想像できます。
お気に入りのポイント:
媒体をまたいで、一つの画面で施策ごとの発信効果全体の比較ができること
媒体別・施策別の軸のみではなく、トータルでどれだけの効果があったのかが確認できること
「広告換算価値」を共通の指標として設定したことで、異なる媒体を横断・統合して評価できること
過去の例から傾向を分析し、新たな施策の検討に役立てられること
複合グラフでファンコミュニティの事業貢献度を可視化
さらに山名氏が例に挙げたのは、ファンコミュニティサイトのデータとECのデータを掛け合わせて作成した購買実績推移のカードです。
購買実績の中から、ファンコミュニティに来訪したユーザーによる実績に絞り込み、集計しているとのことでした(ユーザー実績の絞り込みはコミュニティサイト来訪の有無によるものであり、個人を特定できる形では使用されていません)。
効果を測ることが難しかったコミュニティ運営の利益貢献度を、わかりやすく可視化した画期的な事例です。
お気に入りのポイント:
旅行や搭乗の体験をユーザーが自由に投稿するファンコミュニティでの動向と、航空券のEC販売の実績という、これまで実現が難しかった掛け合わせを行っていること
ファンを増やすことがどの程度収益向上に繋がっているかが可視化されていること
コミュニティの運営という、事業への貢献度が計測できなかった領域での効果を明らかにしていること
動的な画面切り替えで深掘り分析を実現するドリルパス
「Domoを初めて使う人には必ず見せるようにしています」と成田氏が紹介したのが、ドリルパスの機能です。
ドリルパスとは、集計された箇所をクリックすると、その部分のさらに詳細な集計の画面に遷移する、Domoの特徴的な機能です。他の参加者からも「あれ、ウケがいいですよね!」と共感の声が笑いとともに起こりました。
お気に入りのポイント:
気になった時に別のページに行かなくてもすぐに確認することができること
ポンポンと画面が切り替わり動いていく様子が、わかりやすいというだけでなく、使っていて面白さ・気持ち良さがあること
4.Domoを導入する決め手となったポイント
ここまではDomoの魅力や経験談をディスカッションしてきましたが、最後にそれらを総括するとも言えるテーマとして、Domo導入の決め手・他のBIシステムとの違いが話題となりました。全パネラーが、複数のBIシステムを試用し比較検討をした上で、最終的にDomoを選んだと言います。その理由に迫ります。
オールインワンであること
多くのBIシステムは、ビジュアライゼーション、つまり「美しいチャートを作ること」にのみ特化しています。そうしたシステムを採用する場合、分析の材料となるデータを格納した別のデータベースツールを用意し、BIシステムに接続するという構成にする必要があります。
一方Domoでは、データの格納・加工整形・ビジュアライズまでの全ての工程を、他システムを経由することなく行うことができます。
「この点が非常に魅力的だった」と山名氏は言います。
山名氏の経験によると、「複数のシステムを連携して運用している場合、何らかの障害が起きたときに、どの部分に問題があるのかの突き止めることは難しい場合が多く、ITシステムの運用経験を長年積んだ人でないとスムーズに対処することは困難」とのこと。そのため、Domoは可視化部分とデータベース部分が一体化していることが、非常に魅力的だったと語りました。
扱いやすい「必要な機能」が揃っていること
続いて山名氏が指摘したのは、分析機能を豊富に揃えたBIシステムには、それを使うユーザーにとって「必要な機能」と「必要でない機能」が混在している、という点でした。今では多くのBIシステムが競うように推している重回帰分析などの高度な分析機能は、一見目を引くものの、自身の担当領域の分析の中では「必要でない機能」だったと言います。
基本的な「必要な機能」は備えた上で、ブラウザ上で扱え、シンプルなインターフェースで、コーディングの知識がなくても使いこなすことができる。Domoのそうした特徴が、BIツールを選ぶ上で重視していたポイントだったとのことです。
操作しやすく、共有しやすく、わかりやすいこと
約1ヶ月をかけて、複数のBIシステムの比較検討をしたという棚橋氏。「BIシステムで何がしたいのだろう?」と考えた時に、最も大事にすべきなのは「全従業員に共有しやすいこと」「画面操作などがわかりやすいこと」であり、それらに最適なのがDomoでした。
社内にデータサイエンスや分析の業務を専任で行う部署がないため、棚橋氏が求めていたのが、ユーザー自身でチャートや帳票の作成を行うことができるシステム。Domoであればマウスのクリック程度の簡単な操作で編集を行うことができるため、誰にでも簡単に扱うことができると確信したとのことでした。
また成田氏は、複数のシステムを営業部門でトライアル利用した結果、満場一致でDomoに決まったというエピソードを紹介しました。
Domoの導入前から別のBIシステムを利用していたものの、操作が難しく、表形式の集計の利用がメインでした。グラフ形式でデータを可視化するのはごく一部のユーザーのみだったと言います。それに加え、当時はシステムの管理を専任で行う情報システム部門がなかったという背景もあり、誰にでも直感的にわかりやすく使うことのできるDomoが選ばれたとのことでした。
データソースとの接続
データソースとの連携を行う際に、API開発不要で接続可能なコネクター機能を使うことができる点もDomoの強みであると、各パネラーが口を揃えて語りました。
「社内のあらゆる箇所・複数のソフトウェア上にデータが散在している」(棚橋氏)
「データの取得元はすべてクラウド上にある」(山名氏)
「情報システムの担当部門がなく、データの接続も営業部門が自ら行う必要があった」(成田氏)
状況は様々でしたが、いずれのケースにも対応ができる充実したコネクター機能を持っている点もDomoが選ばれた理由だったようです。
データ容量と価格の体系
「データベースツールは使っていくうちに、やりたいことがどんどん増えていき、必要なデータ量も増えていくもの」
そう切り出し、データ容量に連動する価格体系も重要な選考基準だったと、非常に専門的な観点から山名氏は語りました。
多くのデータベースツールは、格納可能なデータ容量の上限に準じて料金が上がる従量課金制を採っています。Domoの利用価格も従量課金制となってはいますが、データ容量に応じた料金の増加カーブが他システムと比べて緩やかだという点を評価しました。
全体を通しての感想:早くこんなコミュニティが欲しかった!
様々な観点からDomoの特徴・魅力が紹介され、Domoへの愛がこれでもかと語られた時間でした。
画面越しに参加して抱いた感想は、「羨ましい!」の一言に尽きます。
筆者は、アタラに入社する前はDomo導入企業でDX推進を約3年ほど担当していました。当時、他社の先進事例や仲間を見つける術がなく、遠回りを繰り返し何度も失敗しながら、日々「これでいいのかな?」という不安とともにDomoの活用術を身に着けていました。
「Domo Buddiesがあの時あったら!」「こんな先輩達に出会えていたら!」と何度も思いながら、Domoのパートナー企業の者としてではなく、ひとりのDomoファンとして、ワクワクが半分、嫉妬が半分、という心持ちで聞き入っていました。
Domoに限らずBIシステムには、様々な機能があります。
それらを駆使しあらゆることができる分、あれもこれもと盛り込んでいくうちに収集がつかなくなる。その結果、本来の目的が忘れ去られてしまい、見栄えが良いだけの役に立たないチャートの山ができあがる。
こうしたケースを非常によく見聞きしますし、実際に経験もしてきました。そのため、セッション内で話題に上がっていたように、目的意識を忘れずに"やらないことを決めること"も非常に重要です。
一方で、そのような進め方を続けていくと、新たな機能や優れた使い方などの情報から遠のき、単一的な使い方のみとなる"データ利用のガラパゴス化"とも言える誤ったデジタル・トランスフォーメーションに向かってしまう、という難しさがあります。
様々な業界・業種でそれぞれ異なる使い方をしているDomoのBuddies(=仲間たち)との情報交換や悩み相談の場が、そうした問題を補ってくれることでしょう。
まずは勉強会を覗いてみる、という気軽な気持ちでも大歓迎!なコミュニティですので、気になった方はぜひ参加してみてください!
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