リテールメディア入門、Robynを使ったMMM、デジタル広告の価値既存:ナレッジハイライト2022年9月号
はじめまして。
アタラ合同会社 マーケティングコンサルティングチームの小湾です。
アタラでは、「アタラ道場」という勉強会を開催しています。この勉強会では、広告プラットフォームのアップデートについての共有や、昨今のマーケティングトレンドに留まらず、メンバーそれぞれの強みを活かしたナレッジの共有を、毎回一人のコンサルタントが「師範」となって持ち回りで行っています。
今回は、7月・8月に開催された勉強会の様子を皆さんにもシェアしたいと思います!
Meta社の高度な分析ツール(オープンソース)、Robynを使った「MMM」について
7月の道場は、外部講師による「Meta社の高度な分析ツール(オープンソース)、Robynを使った「MMM」について」でした。
Meta社の提供している分析ツール「Robyn」とはMetaが無料で提供しているマーケティング ミックス モデリング (以下、MMM)の分析ツールという紹介から始まり、MMMを活用する意義や、具体的な分析手法を講師の方からご教示いただきました。統計学に明るくない自分でも概要を理解できるくらいわかりやすく、簡単ではありますが内容をご紹介します。
マーケティング ミックス モデリング (MMM)とは
マーケティング・ミックス・モデリング(以下、MMM)とは、あらゆるマーケティング施策を総合的に統計処理・分析することです。MMMの活用によって、施策毎のROIや施策間の影響を把握することが可能になります。また、デジタル広告はもちろんのこと、マスメディアへの出稿や店頭プロモーションといった横並びでの比較が難しい施策の成果を把握することも可能になります。効果を把握できると、予算配分の最適化ができるようになるため、効果の予測にも役立ちます。
GoogleではMedia Mix Modelingという名称で論文も出されています。
MMMを実施する意義と今後の予想
施策の投資効果を把握し、予想が可能になることは意思決定を強固にする一方で、一朝一夕で取得できることではないとも感じました。分析に必要なデータ・変数の収集と処理を適正に行わなければ、分析結果も違ってくるので専門性の高い領域だという印象です。
しかし、運用型広告においては、cookie規制が進み収集可能なデータは少なくなっていくことは確実で、管理画面の数字で判断できることは限られてきます。今後の施策効果を把握するにはMMMのような統計的手法や、運用型広告登場以前に使用されていた分析手法の重要性が増してくると個人的には感じています。
今回は自分の学ぶべきスキルの視野が広がり、有意義な講義となりました。
リテールメディア入門
8月の道場は、高瀬師範による「リテールメディア入門」と中川師範による「デジタル広告の「価値毀損」について」でした。まずは、「リテールメディア入門」についてです。
リテールメディア(Retail Media)とは
講義では下記がリテールメディアの定義とされていました。
身近な例では、Amazonが提供している広告サービスがあげられます。米国では参入する小売業も増加しており、日本でも注目を集めはじめています。
最大の特徴は、ECに登録しているデータや閲覧データを使用した広告を提供できることです。商品を卸すブランドは、卸先の小売業者が提供するリテールメディアを通じて広告を配信することで、売上拡大が見込めます。
Amazonを例にすると、Amazon内での検索結果に基づいて商品をプロモーションすることや、商品詳細を閲覧したことのあるユーザーに再度リーチすることが可能です。
リテールメディアの注目度が高まる背景
パンデミックにより小売業者売上に占めるECの比率が急上昇したことが大きな要因とのことです。長く続いたパンデミックにより、ECからの購入は一時的なトレンドではなく、多くの消費者の生活習慣の一部となりました。小売業者は消費者との接点とデータが増えたことで、リテールメディアのビジネスモデルを構築する環境が整いました。
リテールメディアのビジネスモデル
リテールメディアへの参入障壁が低くなっている背景には、アドテク企業がリテールメディア向けサービスを展開していることで、ワンストップでサービス開発できる環境が整っていることが要因の一つとしてあるようです。
DSP企業として知られているCriteoもリテールメディア向けサービスを提供している企業の一つです。Citeoのサービスを利用すると、リテールメディアでの広告枠の買付けから配信まで一気に可能となります。Criteoのサービスを利用したリテールメディアが拡大すれば、配信手法の一つにリテールメディアが加わることが予想されます。
日本におけるリテールメディアの展望
日本では多くの小売企業がポイントシステムを導入し、それらには会員情報が紐づいているので環境は整いつつあると講義を聞いて感じました。コンビニではデジタルサイネージが拡充し、スーパーではポイントカードを提示するとレジからクーポンが発行される光景は珍しくなく、実店舗では当たり前となっています。
ECの利用率向上や配信ネットワークの構築という課題はありますが、既に大手ドラッグストアや家電量販店では広告商品の提供が始まっているので、市場規模は更に加速するでしょう。
デジタル広告の「価値毀損」について
デジタル広告の「価値毀損」とは
広告主のブランドを傷つける、ブランド価値を低下させる可能性のある諸課題の総称です。多くは、広告がユーザー(人間に)に実際に見られているのか、クリックされているのか、掲載先は適切なのかという課題が中心となります。各課題はビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティという呼び方で語られます。
ビューアビリティ
広告が実際にユーザーに見られているのか?という問題です。ユーザーが視認可能な状態である表示比率を指します。Webブラウザ上の広告枠はブラウザの読み込みによって広告表示がされますが、、スクロールしなければ見えない広告枠に配信されてしまうことがあります。見られる広告枠に配信をされている場合でも、課金対象になることがあり、見られていない広告に費用が発生してしまう、というのが問題でした。
アドフラウド
アドフラウドとは、デジタル広告で発生する広告詐欺や、不正広告を指します。不正な業者がbotを用いて、広告のインプレッションやクリックを水増しし、不正に金銭を得る個人や集団によって引き起こされる問題です。
botはインプレッションを発生させるものだけでなく、不正クリックを実行させるタイプも存在します。
ブランドセーフティ
不快な表現や違法コンテンツに代表される、ブランドイメージを毀損する可能性のあるWebサイト・コンテンツへの広告配信を排除する考え方です。
広告に触れるユーザーにも直接影響し、議論も活性化しやすいテーマです。
共通点
上記で取り上げたテーマの共通点は広告の”表示”に関わっている課題という点です。広告のパフォーマンスを評価する際は、クリックやコンバージョンを評価指標として使用することが一般的なため、指標の起点となる”表示”への意識は薄くなってしまう方は多いのではないでしょうか。CPCやCPAを効率化することは、投資効果を最大化するうえで追及すべき指標ですが、ブランドを守る観点(=傷つけない)も重要になります。
対策
ブランドを守るために対策できることとしては、「メディアの見直し」「アドベリフィケーション ツールの導入」が挙げられます。
メディアの見直し「ビューアブルインプレッション」がレポート指標にあるか、インプレッションの定義が明確か、といった形でメディアの見直しができます。「ビューアブルインプレッション」がレポート指標にあれば、CPMやCTRを再計算しクリエイティブやパフォーマンスを適切に評価できますし、すぐに取り組めそうな内容ですね。
「アドベリフィケーションツール」とは、ブランドの価値毀損を防ぐツールです。費用はかかりますが、各課題に対して適切なソリューションを提供されているため、幅広い課題に対して対応が可能です。
おわりに
リテールメディアについては今後も目が離せない状況ですので、日米の情報キャッチアップは追い続けたいと感じました。また、会員情報を保有する事業者は広告配信プラットフォームになりえると確信ができました。次の○○メディアが生まれる日を想像するとワクワクしますね。
ブランドの価値毀損については、今からでも取組めることがあるので、見直しを始めたいと思います。
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